このページでは、登録販売者試験の第2章(人体の働きと医薬品)の消化器系について、重要なポイントと出題例をまとめました。
【第2章】消化器系の重要ポイント・出題例
消化器系の学習ポイントは、3つあります。
- 消化器系の構造やはたらきを理解する
- 図やイメージを使って、どんな形状なのか見ておく
- ややこしい箇所はひっかけ問題として出題されやすい
これらを頭の片隅に置きつつ、あなたのお手元にあるテキストや手引きを見ながら活用してください。
あなたの勉強のお力になれば幸いです。
消化の項目の重要ポイント・出題例
消化器系
消化管…口腔から肛門まで約9メートルの長さで全部が繋がっている器官系のことです。
- 口腔 → 咽頭 → 食堂 → 胃 → 小腸 → 大腸 → 肛門
消化腺…4つあります。
- 唾液腺
- 肝臓
- 胆嚢(たんのう)
- 膵臓(すいぞう)
消化の種類について
- 科学的消化……胃液などの酵素で分解する働き
- 機械的消化……口で噛む、胃の運動などの動き
科学的消化は消化管、機械的消化は消化腺がそれぞれ役割を担っています。
・消化腺も、消化管と比べてどの位置にあるか把握する
・消化管の「全長9メートル」が別の数字になっている
・消化管の「咽頭」が「喉頭」になっている
・消化腺の「4つ」という数字が増減している
・化学的消化と機械的消化の内容が逆になっている
口腔の重要ポイント・出題例
口腔の項目は、大きく2つに分けます。
- 歯
- 舌(唾液腺、咽頭)
歯の重要ポイント・出題例
歯は歯周組織によって、顎の骨に固定されています。
- 歯周組織…歯肉、歯根膜、歯槽骨、セメント質
歯の見える部分が歯冠(しかん)、歯ぐきに埋まって見えない部分が歯根(しこん)です。
歯のエナメル質は、人間で1番硬い部分となります。
歯の表面から順番をたどると、以下の通りになります。
エナメル質 → 象牙質 → セメント質
また、エナメル質の下に位置する象牙質には、神経や血管が通っている歯髄を取り囲んでいます。
虫歯が象牙質まで進行すると神経を刺激するため、歯がしみたり痛みを感じたりするようになります。
・エナメル質 → 象牙質 → セメント質の場所を理解する
「体で最も硬い部分は歯槽骨」
エナメル質と象牙質が逆になっている
舌の重要ポイント・出題例
舌の表面にはたくさんのザラザラした小さな突起があり、舌乳頭(ぜつにゅうとう)と呼ばれます。
その舌乳頭に、味を感知する味蕾(みらい)が集まっています。
舌の役割
- 味覚を感知する
- 咀嚼(そしゃく)した飲食物を攪拌して唾液と混和させる
※攪拌(かくはん)…かきまわす、かきまぜるという意味
舌乳頭と味蕾の説明が逆になっている
唾液腺の重要ポイント
唾液腺(だえきせん)の役割
- 食物を噛み砕きやすくして、嚥下しやすくする
- 味覚(味を感じること)の役割
- デンプン → デキストリン、麦芽糖に分解
- リゾチーム…口腔粘膜の殺菌
- 口腔内のpHを中性に保ち、齲蝕をふせぐ
※嚥下(えんげ)…食物などを飲み込むこと
※齲蝕(うしょく)…虫歯のこと
特に重要なのは、唾液中のプチアリン(唾液アミラーゼ)が、デンプンをデキストリンや麦芽糖に分解することです。
・デンプン → プチアリン(唾液アミラーゼ) → デキストリン・麦芽糖
あなたのお手持ちのテキストに、メモしてほしいポイントの1つです。
唾液が出ると「リゾチーム」という物質が殺菌し、さらに中性にして虫歯の予防もしてくれます。
例えばお菓子を食べると口腔内が酸性になり、歯が溶けやすくなります。そこで唾液が酸性寄りの口腔内を中和し、虫歯になりにくくします。
そんなリゾチームは優秀で、医薬品にも成分として出てきます。
さらに、唾液は口腔内をほぼ中性に保ってくれる大事な役割があります。
ちなみにデンプンを分解した「麦芽糖」は、医薬品の成分としても活用されています。
※参考記事:【登録販売者試験】腸の薬の成分の覚え方・解説・語呂合わせ(マルツエキス)
唾液中のプチアリンが別の物質名になっている
唾液の役割において、口腔内がアルカリ性・酸性になっている
咽頭の出題ポイント
咽頭(いんとう)とは、喉 → 鼻 → 食道 → 肺への入り口までつながっていて、消化器と呼吸器の両方に属する器官です。
つまり消化器系でありますが、呼吸器系の項目でも出てきます。
のどぼとけがあるところが喉頭(こうとう)ですが、この喉頭の入り口にある弁が喉頭蓋(こうとうがい)と呼ばれます。
喉頭蓋はフタのようになっていて、反射的に閉じてくれるおかげで、むせることなくご飯が食べられます。
喉頭蓋に異物が入ると、気道が塞がれて息ができなくなります。
・咽頭(いんとう)と喉頭(こうとう)の読み間違いに注意する
「喉頭蓋が反射的に開く」
食道の重要ポイント・出題例
食道の役割
- 喉元からみぞおちまでの、直径1~2センチの管状の器官
- 消化液の分泌腺がない
- 内容物は食道の運動によって送られる
- 食道の括約筋が、内容物の逆流を防いでいる
名前の通り、食道は食べ物の通り道です。
よく噛んで飲み込まれた食べ物が通るための器官です。
胃は消化液の分泌腺がありません。
つまり、胃で消化をすることがないということです。
食道が動くことで、胃に送られます。
また、食道の上下の端には括約筋(かつやくきん)があり、胃酸や食べ物が逆流しないように防いでくれる役割をしています。
もし胃酸が逆流すると、食道の粘膜を刺激して胃のあたりがムカムカしてきます。
これがいわゆる胸やけと呼ばれる症状です。
・食道の役割を理解する
「食道に分泌腺がある」
「重力によって胃に送る」
「食道には括約筋はない」
いずれも×間違いです。
胃の重要ポイント・出題例
胃の壁は筋肉でできていて、この筋肉は平滑筋(へいかつきん)と呼ばれます。
普段は縮んでいますが、胃に内容物が送られてくると、その刺激に反応して胃壁の平滑筋が弛緩します。
つまり胃の筋肉がゆるんで容積が広がるのですが、これを胃適応性弛緩といいます
胃で分泌される物質
- 胃酸
- ペプシノーゲン
- 胃粘液
胃酸は胃内を強酸性に保ちます。
胃酸が強酸性のおかげで、細菌やウイルスが胃に到達しても一緒に溶かす役割もします。
※喉などの粘膜から感染したらアウトです
また、胃酸はペプシノーゲンをペプシンに変えます。
ペプシンに進化することで、タンパク質を消化することができます。
ペプシノーゲンは、胃酸によってペプシンに進化した後、タンパク質を消化してペプトンにします。
胃で作られたペプトンは、小腸でさらに細かく消化されます。
・ペプシノーゲン + 胃酸 = ペプシン
・タンパク質 + ペプシン = ペプトン
胃粘液は、胃酸から胃を保護してくれます。
そして小腸で、ビタミンB12の吸収に役立つ成分が含まれています。
胃に入った食べ物が滞在する時間は、栄養素によって変わってきます。
- 炭水化物が多い…滞留時間が短い
- 脂質が多い…滞在時間が長い
例を挙げると、ラーメン(炭水化物)を食べた後は早くお腹が空くけど、焼肉(脂質)を食べた後はなかなかお腹が減らないイメージです。
・胃で分泌される3つの物質(胃酸、ペプシノーゲン、胃粘液)の役割を把握する
・ペプシノーゲン → ペプシン → ペプトンの順番
「胃壁の平滑筋が収縮する」
「ペプシンをペプシノーゲンに変える」
「胃内を強アルカリ性に保つ」
「ペプトンをペプシンに変える」
いずれも×間違いです。
胃は内容が少し難しいため、出題傾向が高いです!
小腸の重要ポイント・出題例
小腸の概要
全長6~7メートルの管で、十二指腸、空腸、回腸の3つにわかれます。
小腸は、栄養分の吸収という大事な役割をもっています。
- 十二指腸…25センチのC字型に彎曲した部分
- 空腸…小腸の40%を占める
- 回腸…小腸の60%を占める
小腸は、十二指腸 → 空腸 →回腸 の順番に長くなっていきます。
十二指腸は25センチしかなく、空腸は40%、回腸は60%くらいを占めています。
空腸と回腸に明確な境目はありません。
・膵臓(すいぞう) → 膵管(すいかん)
・胆嚢(たんのう) → 胆管(たんかん)
・膵臓 → 膵液(すいえき)
・胆嚢 → 胆汁(たんじゅう)
膵液にはトリプシノーゲンという物質が含まれていて、小腸でトリプシンに進化します。
絨毛について
小腸な、栄養分の吸収に重要な器官ですが、効率よく栄養を吸収するために内壁の表面積を大きくするためのしくみが絨毛です。
小腸の内壁の表面は絨毛でおおわれていて、その絨毛の表面には、さらに微絨毛(びじゅうもう)があるため栄養の吸収効率を高めています。
小腸内の消化酵素について
- トリプシン…タンパク質を分解
- エレプシン…タンパク質 → アミノ酸に分解
- マルターゼ・ラクターゼ…炭水化物 → 単糖類に分解
膵臓の膵液に含まれるトリプシノーゲンが、小腸ではトリプシンに進化します。
そしてこれらの栄養素が、小腸の絨毛から無駄なく吸収されます。
空腸と回腸の割合(数字)を覚える
「トリプシノーゲン → トリプシン 」の順番が重要
十二指腸の説明で、名称が空腸・回腸になっている
「空腸は60%、回腸は40%を占める」
「トリプシンをトリプシノーゲンに変える」
膵臓の重要ポイント・出題例
膵臓(すいぞう)は胃の後ろ下部にある細長い臓器で消化腺の1つです。
膵臓から、消化するための酵素を含む膵液(すいえき)を十二指腸に分泌します。
膵液は弱アルカリ性で、胃のはたらきで酸性になった内容物を中和します。
膵液に含まれる消化酵素
- 膵液アミラーゼ…炭水化物(デンプン)
- トリプシノーゲン…タンパク質
- リパーゼ…脂質
膵臓アミラーゼは唾液アミラーゼとほぼ同じ物質なので、デンプン(炭水化物)を分解します。
トリプシノーゲンは、小腸でトリプシンに進化することでタンパク質を分解できるようになります。
リパーゼは脂質を分解する酵素です。
(脂質を意味するリポ+酵素を意味するアーゼ)
内分泌腺について
膵臓は消化腺ですが、内分泌腺でもあります。
※内分泌とは、血液中に分泌すること
そのため血糖値を調節するホルモンを血液中に分泌します。
- インスリン…血糖値を下げる
- グルカゴン…血糖値を上げる
余談ですが、インスリンが正常にはたらかなくなり、血液中の糖が増える病気が糖尿病です。
どの消化酵素がどの物質を分解するかを確認する
インスリン、グルカゴンのちがいを確認する
「膵液を小腸・大腸に分泌する」
「膵液は弱酸性である」
「トリプシンがトリプシノーゲンになると、タンパク質を分解する」
「インスリンは血糖値を上げる」
いずれも×間違いです。
脾臓は内容が難しいため、出題頻度が高い傾向です!
胆嚢の重要ポイント・出題例
胆嚢(たんのう)は、肝臓で生成された胆汁を凝縮して蓄える器官です。
胆汁には、利胆効果のある胆汁酸塩(たんじゅうえんさん)が含まれています。
胆汁酸塩は、コール酸やデオキシコール酸のことで、胃の薬に配合されている利胆成分と名前が似ています。
参考記事:利胆成分の解説(胃薬の覚え方)
肝臓で作られた胆汁は十二指腸に送られ、小腸で再吸収されて肝臓に戻されます。
このような循環システムを「腸肝循環」と呼びます。
また、胆嚢は胆汁を蓄えておく器官なので、胆嚢で胆汁は作られません。
内容が少しややこしいので、ひっかけ問題として出題されたりします。
・肝臓から作った胆汁 → 十二指腸 → 小腸で吸収 → 肝臓
✔︎ 【ビリルビン】の重要ポイント
・脾臓でヘモグロビンが分解 → ビリルビン + 腸内細菌 = 茶褐色の色素になる
胆汁中のビリルビンは赤血球中のヘモグロビンが分解された老廃物です。
いわゆる茶褐色は「うんこの色」ですが、これがビリルビンの本来の色です。
・腸肝循環の順番を見ておく
「胆嚢は、膵臓で産生された胆汁を蓄える器官である」
「胆汁中のビリルビンは、血球中のヘモグロビンが分解された老廃物」
「胆汁は十二指腸から大腸を通って肝臓に戻る」
いずれも×間違いです。
肝臓の重要ポイント・出題例
肝臓はブドウ糖をグリコーゲンにして蓄えるし、ブドウ糖に戻すこともできます。
脂溶性と水溶性のビタミンの両方を蓄えられます。
✔︎ 肝臓 = アンモニア → 尿素
アルコールは人体に有害ですが、酢酸に変えることで無害化します。
また、肝臓は必須アミノ酸は体内で作れませんが、必須アミノ酸以外のアミノ酸を作ります。
「肝臓はグリコーゲンをブドウ糖にして蓄える」
「肝臓は脂溶性のビタミンのみを蓄える」
「肝臓はアルコールを酢酸に中和し、最終的にアセトアルデヒドにする」
「肝臓は、必須アミノ酸を生合成する」
いずれも×間違いです。
大腸の重要ポイント・出題例
前項目の小腸は栄養吸収がメインですが、大腸は水分と電解質吸収をおこないます。
また、大腸には絨毛がありません。
・上行結腸 → 横行結腸 → 下行結腸 → S字結腸 → 直腸
大腸の各名称の覚え方
「上に横、下に行ったら、Sに直」
俳句のような5・7・5形式で、大腸を順番通りに覚えられます。
便意について
便意とは、糞便(うんこ)を出したいという生理的反応です。
通常、糞便は下行結腸、S状結腸に滞留しています。
そして糞便が溜まってくると、空になっている直腸に運ばれ、その刺激に反応して便意が起こるしくみになっています。
この便意を繰り返し我慢しつづけてしまうと、腸管の感受性が下がってしまうため、慢性的な便秘の原因になったりします。
参考:【登録販売者試験】腸の薬の成分の覚え方・解説・語呂合わせ(便秘が起こる主な原因)
腸内細菌のはたらき
- 腸管内の食物繊維を発酵分解 → メタン、二酸化炭素などのガスを生成する
- 食物繊維を分解して生じる栄養分 → 大腸の粘膜上皮細胞の活動に利用される
- ビタミンKなどの物質を作る
ビタミンKは、血液凝固や骨へのカルシウムの定着に必要な栄養素で、第3章でも出てきます。
糞便の成分の割合について
- 水分…大半を占める(70%くらい)
- 腸壁上皮細胞の残骸…15〜20%
- 腸内細菌の死骸…10〜15%
- 食物の残滓…5%
※残滓(ざんし)…残りカスのこと
粘膜上皮細胞とは、大腸の内側の表面をおおっている細胞です。
もちろん細胞なので生きています。
栄養分を取り込んで活動し、役目を終えてはがれ落ちた粘膜上皮細胞は糞便の一部となって体外に排出されます。
大腸の各部位の名称、役割を覚える
「大腸には絨毛がある」
「大腸は栄養を吸収する重要な器官である」
「大腸は栄養を吸収する重要な器官である」
「糞便の成分の大半は食物の残滓である」
いずれも×間違いです。
肛門の重要ポイント・出題例
肛門は、直腸粘膜が皮膚へと連なる体外への開口部で、つまり糞便(うんこ)が排出される器官です。
- 歯状線(しじょうせん)…直腸粘膜と皮膚の境目にあるギザギザの線
- 肛門括約筋…肛門周囲をかこんでいる、排便を調節する筋肉
肛門周辺には静脈が通っていて、細かい網目状にたくさん存在します。その細い静脈の血管が鬱血すると痔の原因になります。
トイレで力むと切れ痔になってしまう=肛門の血管が、力むことでグッと血圧が上がるため血管が切れてしまうしくみです。
腸内細菌の役割を理解する
糞便の成分の割合(%)を見ておく
糞便は、食物の残滓が50%を占める
肛門周辺には動脈が通っている
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【第2章】消化器系のまとめ
消化器系の学習ポイントを3つ紹介します。
- 消化器系の構造やはたらきを理解する
- 図やイメージを使って、どんな形状なのか見ておく
- ややこしい箇所はひっかけ問題として出題されやすい
特に消化器系は、あまりなじみのない脾臓や胆嚢といった器官が難しいと感じるかもしれません。
また消化酵素のトリプシノーゲンやトリプシン、ペプシンといったカタカナ用語もひっかけ問題として出題されやすいです。