中枢神経と抹消神経のちがいがわからない。
血液脳関門って結局何なのか。
自律神経系の表が、覚えられない。
交感神経と副交感神経の攻略法があれば知りたい。
こんな勉強の悩みを、解決します。
この記事では第2章の神経系について解説しています。
中枢神経・抹消神経・交感神経・副交感神経を、なるべくわかりやすい言葉でまとめました。
さらに、交感神経・副交感神経が記憶に残りやすいイメージ方法を教えます。
テキスト(手引き)を見ながらこの記事を読むと、理解が深まります。
あなたの勉強のおともに、活用してください。
中枢神経系
神経は大きくわけると、中枢神経系、末梢神経系の2種類です。
中枢(ちゅうすう)神経は、脳と脊髄から成り立つ神経系です。
抹消(まっしょう)神経は、脳と脊椎から体のすみずみに伸びている神経系です。
わかりやすくイメージすると、こんな感じです。
- 中枢神経……司令を送る組織のボス
- 末梢神経……ボスの指示で動く部下たち
ボス(中枢神経)は2人、脳と脊髄(せきずい)です。
脳は、脳みそのことです。
脊髄は、背骨の中を通っている神経です。
脳から首 → 背中 → 腰 → 尾てい骨 まで伸びています。
脳と脊髄は、この2つで成り立ちます。
中枢神経系であり、神経系のボスの立ち位置です。
脳
脳は、記憶、情動(じょうどう)、意思決定などの役割を担当しています。
※情動とは、喜怒哀楽のような感情のことです
脳の下部に、自律神経系やホルモン分泌などの調節をする視床下部(ししょうかぶ)などがあります。
脳の細胞は活発に活動しているため、大量の酸素や、脳のエネルギーであるブドウ糖を消費しています。
- 15%……血液の循環量
- 20%……酸素の消費量
- 25%……ブドウ糖の消費量
これらの数字は、過去問や試験に出てくるので、覚える必要があります。
わかりやすい覚え方があります。
- 血液は赤いイチゴをイメージ = イチゴ(15)
- 酸素は化学式がO2なので、ひっくり返して20
- ブドウ糖は甘くてニコニコする = 2525 = 25
私が勉強していたYouTubeの講義動画から、覚え方を学びました。
血液脳関門
“脳の血管は、末梢神経に比べて、物質の投下に関する選択性が高いので、血液中から脳の組織に移行できる物質は、ブドウ糖など一部の物質に限られています。”
上記はテキスト(手引き)の内容です。
難しく感じますが、わかりやすく例えることができます。
ボス(脳)は部下たち(末梢)より選択能力が高く、「これはOK、これはダメ」とはっきり決めることができます。
そのためブドウ糖など、限られた物質だけが脳にたどり着くことができます。
タンパク質やイオン化した物質も、ブドウ糖のような選ばれた物質では無いので、脳に移行しにくくなっています。
この血液から脳への物質移動が制限される仕組みを、血液脳関門といいます。
そのため、薬を飲んで全身に成分がめぐっていても、脳には薬の成分が入らないようになっています。
ただ、子どもは血液脳関門が未発達なので、薬の成分が脳に入りやすくなっています。
問題で「子供は医薬品の成分が脳に達しにくい」と出てきたら、×間違いです。
血液脳関門という名称なので、血液と脳の間に何かしらの関所のような関門があるイメージです。
機能や仕組みを表した呼び方なので、実際に脳に関門があるわけではありません。
延髄
延髄には4つの中枢があり、これらは覚える必要があります。
嘔吐(おうと)や、咳嗽(がいそう)など、読みにくい漢字も出てきます。
- 心臓中枢……心拍数の調整
- 呼吸中枢……呼吸の調整
- 嘔吐中枢……吐き気や嘔吐の調整
- 咳嗽中枢……咳の調整
これらが脊椎(せきつい)にあると出てきたら×間違いです。
正しくは、延髄です。
4つの中枢について「延髄の四天王」と覚えるとわかりやすいです。
脳と脊髄は、ボスです。
延髄は、幹部的なポジションの四天王です。
心臓、呼吸、嘔吐、咳嗽、とそれぞれに特化した4人が出てきます。
この中枢4つは、試験で問われるので注意。
あくまで個人的なイメージですが、意外と記憶に残ります。
延髄(えんずい)は首のうしろあたりにあります。
つながっている順番は、脳 → 延髄 → 脊髄 です。
脊髄
脊髄(せきずい)は脊椎(せきつい)と呼ばれる骨の中にあります。
脳と末梢神経の間で刺激を伝える役割があり、指先などから刺激を受けると脳に伝えています。
しかし脊髄が脳に伝えず、抹消神経からの刺激を脊髄が返す場合があり、脊髄反射と呼ばれます。
例えば、あなたが沸騰したヤカンに触ってしまって「熱い!」と判断します。
でも「熱くてやけどするから手を離そう」とは思わず、無意識に手を離しているはずです。
まさにこの無意識な行動が、脊髄反射です。
もし脳に指令を送っていると、判断に数秒の遅れが生まれるので、おててのやけどがひどくなります。
脊髄反射は生き物の生命維持の反応の1つとして、生きるために役立っています。
末梢神経系
末梢神経は、ボス(中枢)に対して部下たちのことです。
部下(末梢神経)はボス(脳と脊髄)から身体の各場所へ伸びている神経で、つまり部下たちが、身体中にたくさん巡っています。
そんな末梢神経、体性神経系と自律神経系にわけます。
体性神経系
体性神経系(たいせいしんけいけい)は、自分の意思で動くことができる神経です。
体性神経系は、知覚神経と運動神経にわけられます。
- 知覚神経……刺激や情報を脳に伝える
- 運動神経……脳から筋肉に伝える
知覚神経は皮膚や目、鼻などの感覚神経からの外部情報を脳に伝える神経です。
脳に行く側の末梢神経です。
運動神経は、脳から筋肉に情報を伝える神経で、脳から出る側の末梢神経です。
学生のころ「〇〇くんは運動神経がいいね〜」と言ったりしていましたが、まさに体性神経系の運動神経のことですね。
自律神経系
もう1つの末梢神経が、自律神経系(じりつしんけいけい)です。
自分の意思で動かす体性神経系とちがい、
自律神経系は、無意識にはたらく神経です。
自律神経系はさらに、交感神経系と副交感神経系にわけられます。
- 交感神経……緊張、集中、ドキドキする
- 副交感神経……安心、まったり、リラックス
自律神経は、この2つの神経で成り立ちます。
緊張と安心、ドキドキとリラックス、といった真逆の状態です。
まるで電気のスイッチの切り替えのように、ONかOFFのどちらか一方的になります。
自律神経も、どちらかが活発なときは、もう1つのほうは活動が抑えられます。
これを、自律神経の二重支配といいます。
テキストでは難しい言い回しですが、要するに自律神経スイッチの切り替えのことです。
この記事の後半に、自律神経系の覚え方を解説しています。
合わせてご覧ください。
神経伝達物質
自律神経は、物質によって様々な効果を発揮しています。
- 交感神経……ノルアドレナリン、アセチルコリン
- 副交感神経……アセチルコリン
副交感神経 = アセチルコリンです。
これは絶対に変わらない物質で、ノルアドレナリンになったりしません。
対して、交感神経は基本的にノルアドレナリンです。
一部例外として、汗腺の交感神経はアセチルコリンになります。
汗腺が出てきましたが、これも実は分かれています。
- エクリン腺……アセチルコリン
- アポクリン腺……ノルアドレナリン
語呂合わせのような方法で覚えることができます。
【エクリンコリン】
→ エクリン腺 + アセチルコリン
【ノルアポレナリン】
→ アポクリン腺 +ノルアドレナリン
どれも、すべて節後繊維(せつごせんい)の末端から物質が出ます。
節前繊維(せつぜんせんい)は、×間違いです。
ここで、節後繊維というワードが出てきます。
「節後繊維って何?」と思う人も多いです。
テキストには名称しか記載していないので、基本的に丸暗記です。
簡単に言えば、神経の一番末端の部分で、手足だったり皮膚や目や心臓、胃や汗腺などに繋がっている、
自律神経の最終到達点です。
節後繊維について
節後繊維について、もっと深く知りたい人向けの項目です。
どれだけ調べても、医師や専門家が勉強するような内容ばかりだったので、かなり省略して簡単にまとめました。
※試験範囲外なので、読まなくても大丈夫です
節後繊維とは、中枢神経より遠い位置にある神経のことです。
まず背骨から1本指先まで神経が伸びているのをイメージしてください。
この長い1本の神経の真ん中くらいに神経節という中間地点があります。
その神経節から背骨側が節前繊維(せつぜんせんい)、神経節から指先側が節後繊維(せつごせんい)と呼ばれます。
副交感神経は、節前繊維も節後繊維もアセチルコリンのみ放出されます。
交感神経は、節後繊維がアセチルコリンですが、節後繊維はアセチルコリンかノルアドレナリンのどちらかになります。
テキストを見て、分かりにくいと思ったのはあなただけではなく、私も同じ気持ちです。
自律神経系
自律神経系は、無意識にはたらく神経系で
交感神経系と副交感神経系にわけられます。
- 交感神経……緊張、集中、ドキドキする
- 副交感神経……安心、まったり、リラックス
緊張と安心、ドキドキとリラックス、といった真逆の状態です。
ここまでは前半部分と同じ内容です。
自律神経系の覚え方
自律神経系は、交感神経と副交感神経が真逆の反応を示します。
そこで、真逆の心理状態をイメージします。
- 交感神経……獲物を狙う肉食動物
- 副交感神経……まったりしているあなた
交感神経系の覚え方
まずは交感神経です。
ここからしばらくイメージします。
想像してみてください。
トラやライオンなどの肉食動物です。
例えば、ライオンにします。
ドキュメンタリー番組の狩りの映像のように、シマウマを狙っています。
このライオンの全体をイメージしてください。
しっかりと獲物を狙っています。
目は瞳孔が開き、ばっちり獲物を見ています。
口からは、ねっとりとした唾液が出ています。
心臓の音が、バクバクと聞こえてきます。
血圧が上がっているようです。
全身に力が入っていて、血管が収縮しています。
狩りの最中なので、消化している場合ではありません。
胃も腸も活動していません。
身体中の細胞がエネルギーを必要としているので、肝臓から蓄えてあるグリコーゲンを分解して血液に送っています。
たくさん空気を取り入れるために、肺が拡張しています。無意識に深く息を吸っています。
毛がビンビンに立っています。鳥肌ですね。
汗も出てきました。
狩りなので、おしっこしている場合ではありません。
排尿しないように、膀胱の筋肉が大きく緩みます。
この状態の流れが、交感神経による興奮した状態です。
なんとなくイメージしただけですが、この状態に交感神経系の要素が全て含まれています。
- 瞳孔散大(瞳孔が開く)
- 粘性の高い唾液分泌
- 心拍数の増加
- 血管収縮
- 血圧上昇
- 気管支拡張
- 消化管の血管収縮
- 消化管の運動低下
- 肝臓のグリコーゲン分解
- 立毛筋収縮(鳥肌がたつ)
- 汗腺の発汗亢進
- 膀胱の排尿筋の弛緩(排尿抑制)
交感神経系の要素は、狩りをしている動物をイメージすると、比較的わかりやすく覚えることができます。
副交感神経系の覚え方
副交感神経系も、交感神経系と同じイメージ方法で覚えることができます。
興奮状態の上記とは対照的です。
ここでの主役は、まったりモードのリラックスしているあなたです。
テレビを見ていたり、携帯で動画を見ていてもいいです。
誰にも邪魔されない、1人だけのひとときです。
そんなあなたを、客観的に見てみましょう。
家族がいてなかなか1人になれない、まったりした自分が想像できない場合は、のんびりしている猫をイメージしてください。
目は落ち着いていて、瞳孔が小さくなっています。
黒目が、大きく開く必要がないですからね。
うたた寝していて、起きたら口からよだれが出ています。
心拍数も、ゆっくりしています。
血圧も正常通りで、血管も普通に開いています。
肺は最低限の呼吸でいいので、収縮しています。
お腹が空いたのか、お腹からグーと音が鳴りました。
胃も腸も活動していますね。
エネルギーを蓄えるために、肝臓ではグリコーゲンの合成がされています。
こんなにまったりしていても、内臓は働いています。
そろそろ、トイレに行きたくなってきました。
膀胱におしっこが水風船のように溜まると、外に出さなければいけません。
この水風船の部分、膀胱筋が縮むことで排尿が促進されて、おしっこがしたくなります。
このように、まったりモードは副交感神経の集大成となっています。
- 瞳孔収縮
- 唾液分泌亢進
- 心拍数の減少
- 血管拡張
- 血圧降下
- 気管支収縮
- 胃液分泌亢進
- 消化管の運動亢進
- 肝臓のグリコーゲンの合成
- 膀胱の排尿筋の収縮(排尿促進)
副交感神経系の状態をイメージできると、表の項目全て関連づけることができます。
試験当日のあなたは緊張していて、交感神経がバリバリはたらいています。
その場面で交感神経系の問題が出てきたら、実際の自分の様子を考察すれば問題が解けます。
交感神経系、副交感神経系のイメージ勉強法を使うと、表を丸暗記せずに覚えることができます。
自律神経系と医薬品成分
第3章では、抗〇〇成分という名称が出てきます。
抗ヒスタミン成分、抗コリン成分などです。
「抗」がつく成分は、そのはたらきを抑える成分となります。
なので抗コリン成分なら、アセチルコリンのはたらきを抑えるという意味です。
抗コリン成分の作用について
抗コリン成分は自律神経系の神経伝達物質に関係してくるので、自律神経の二重支配がはたらきます。
つまり自律神経のスイッチがはたらくのです。
アセチルコリンが抑えられるということは、副交感神経が抑えられます。
つまり反対の効果である交感神経の方面にはたらく、ということになります。
例えば胃腸薬の抗コリン成分は、胃のけいれん・過剰に出すぎた胃液の分泌を抑えます。
これは、抗アセチルコリン = 副交感神経側に働く、胃液分泌亢進や過剰な動きを抑える、ということになります。
副交感神経を抑えている=交感神経寄りになるということなので、そちら側の状態が副作用として現れます。
- 散瞳……瞳孔が開くので眩しく感じる
- 口渇……唾液の分泌が止まるので口が乾く
- 便秘……腸の運動低下のため
- 排尿困難……排尿筋が緩み、尿が出にくい
これらの状態は交感神経がはたらいている状態です。
つまり抗コリン成分は、アセチルコリンを抑えてアドレナリンを優位にさせる、といった側面を持ち合わせています。
まとめ:神経系について
- 中枢神経…脳と脊髄から成り立つ
- 末梢神経…体の各部に伸びている
- 延髄…心臓、呼吸、嘔吐、咳嗽の4つ
- 体性神経系…自分の意思で動かす神経
- 自律神経系…無意識にはたらく神経
- 抗コリン成分…アドレナリン優位
神経系は難しい用語が多く、理解しにくい分野です。
イメージ方法を使うと、少しわかりやすく理解できます。
ちなみに、神経系は医療系の国家資格なら必須項目であり、生理学に分類されます。
医師や薬剤師はもちろん、看護師、歯科衛生士、柔道整復師などの国家試験にも出てきます。
上記の国家資格と試験範囲を比べると、登録販売者試験は覚える範囲が省略されていて、医療系資格の中では必要最低限の内容となります。
それでも人体に関わる医薬品を扱う以上、必要な知識なのでおさえておいてほしいです。
特に自律神経系は、理解しづらいので試験に出題されやすい傾向です。
しっかり頭に入れておきたいところです。