- 胃薬の成分の、種類が多くてわからない。
- 胃粘膜保護成分の覚え方があったら、知りたい。
- 「胃腸鎮痛鎮痙薬」なんて難しそうで、わからない…
この記事では、胃薬に関係する成分、それぞれの作用をなるべくわかりやすく解説しています。
さらに、成分名が多くて覚えにくい胃粘膜保護成分の語呂合わせを紹介しています。
私は現在、登録販売者としてドラッグストアではたらいています。
この記事は、お手持ちのテキストと一緒にお読みいただくと、さらに理解が深まります。
あなたが勉強しているときに、リアルタイムで活用してみてください。
はじめに:胃の薬の種類について
胃の薬は、大きくわけて4種類あります。
- 制酸薬
- 健胃薬
- 消化薬
- 総合胃腸薬
制酸薬
制酸薬は、胃液の分泌が過剰に出てしまう胃酸過多に効果があります。
いわゆる胃酸の出すぎですね。
そんな胃酸過多によって引き起こされる、
胸やけ・腹部の不快感・吐きけなどの症状をやわらげることを目的とする薬が、制酸薬です。
胃酸のはたらきを弱めたり、胃液の分泌をおさえます。
健胃薬
健胃薬は、弱った胃のはたらきを高めることを目的とする薬です。
独特の味や、香りがあり、唾液や胃液の分泌をうながして、胃のはたらきを活発にします。
消化薬
消化薬は、炭水化物、脂質、タンパク質などの分解に働く酵素を補ってくれます。
胃や腸にある、食べ物の消化を助けることを目的とする薬です。
総合胃腸薬
総合胃腸薬は、さまざまな胃腸の症状に幅広く対応できるように、何種類もの成分が含まれている薬です。
制酸・健胃・消化・胃粘膜保護・消泡・鎮痛鎮痙・整腸などの成分
注意点として、
症状がはっきりしている場合は、その症状に合った成分のみが配合された薬を選択するのが望ましいです。
例をあげると、下記のような感じです。
- 消化不良……消化薬
- 胸やけ……制酸薬
- 胃痛……鎮痛鎮痙成分がメインの薬
胃の薬の成分について
胃の薬の成分は、たくさんの種類から構成されています。
- 制酸成分
- 健胃成分
- 消化成分
- 利胆成分
- 胃粘膜保護成分
- 消泡成分
【胃の薬】制酸成分
制酸成分は、アルカリ性の性質をもっています。
胃から分泌される胃酸は、強い酸性の性質をもっているんですが、、
酸性とアルカリ性が結びつくことで、刺激の少ない中性に変化します。
中和されることで胃酸のはたらきを弱めるため、中和反応と呼ばれます。
制酸成分の覚え方
制酸成分は、成分名にナトリウム・アルミニウム・マグネシウム・カルシウムがあるかどうかで見分けることができます。
これらのカタカナ名は、あなたが学生の頃に理科の授業で聞いたことがあるかもしれません。
「水平リーベ、僕の船〜」から始まる語呂合わせで、元素記号を覚えた記憶があるなら、察しがいいですね。
制酸成分の成分名は、
Na(ナトリウム),Al(アルミニウム),Mg(マグネシウム),Ca(カルシウム)です。
それぞれが元素の名前(ミネラル、無機塩類)から付けられています。
制酸成分の一覧をよく見ると、元素の名称がついています。
- 炭酸水素ナトリウム(重曹)
- 乾燥水酸化アルミニウムゲル
- ジヒドロキシアルミニウムモノアセテート
- ケイ酸マグネシウム
- 酸化マグネシウム
- 炭酸マグネシウム
- 合成ヒドロタルサイト
- メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
- 沈降炭酸カルシウム
- リン酸水素カルシウム
ちなみに、合成ヒドロタルサイトは、アルミニウムとマグネシウムの2種類が含まれています。
「タル(〜アル)」の部分は、アルミニウムを指しているんですね。
「制酸成分=ナトリウム・アルミニウム・マグネシウム・カルシウム」という考え方で大丈夫です。
制酸成分には、「ボレイ(牡蠣)」という生薬があります。
ボレイは貝のカキの殻で、炭酸カルシウムが含まれています。
炭酸カルシウムは無機物でアルカリ性の性質なので、制酸作用があるということがわかります。
制酸成分の注意事項
制酸成分はミネラルなので、アルカリ性の性質を持ちます。
そのため、酸度の高い食品と一緒に使用すると、制酸作用が低下します。
例えば、果物のみかんと一緒に制酸薬を飲むと、胃酸ではなくみかんを中和してしまうんですね。
制酸成分が含まれている制酸薬は、普段の食生活に注意する必要があります。
また、透析を受けている人は、アルミニウムを含む制酸薬を使用してはいけません。
アルミニウムをうまく排出することができないため体内に蓄積してしまい、アルミニウム脳症やアルミニウム骨症を起こしてしまいます。
そして腎臓病の人は、要相談です。
無機塩類(ミネラル)が体内に溜まりやすいからです。
制酸成分は、胃薬以外の他の薬にも配合される成分だったりします。
そのため、メリットだけでなくデメリット(副作用)もあります。
- 便秘…カルシウム、アルミニウム
- 下痢…マグネシウム
つまり、便秘は止瀉薬(下痢止め)、下痢は瀉下薬(下剤)のそれぞれの効果の副作用ともいえます。
【胃の薬】健胃成分
健胃成分は、
味覚や嗅覚を刺激して、唾液や胃液の分泌をうながします。
これにより、弱った胃のはたらきを高めてくれます。
健胃成分は、苦味による作用と、香りによる作用の2種類があります。
- 苦味……オウバク・オウレン・センブリ・ゲンチアナ・リュウタン・ユウタン
- 香り……ケイヒ・コウボク・ショウキョウ・チョウジ・チンピ・ソウジュツ・ビャクジュツ・ウイキョウ・オウゴン
成分名からわかるとおり、健胃成分は生薬で構成されています。
健胃成分の注意点は、オブラートで包まないようにすることです。
健胃薬の粉をオブラートで包んでしまうと、
苦味や香りの効果がさえぎられてしまい、効果が発揮されないからです。
また、生薬以外にも健胃成分があります。
- 乾燥酵母……胃腸のはたらきに必要な栄養素を補給してくれる
- カルニチン……胃液分泌、胃の運動を高める、胃壁の循環血液を増やす
乾燥酵母といえば、エビオス錠(指定医薬部外品)が有名だったりします。
【胃の薬】消化成分
消化成分は、炭水化物・脂質・タンパク質・繊維質などの分解にはたらく酵素を補います。
よく見ると、ほとんどの語尾が「〜アーゼ」と、同じニュアンスになっています。
- ジアスターゼ
- ニューラーゼ
- リパーゼ
- セルラーゼ
- ビオジアスターゼ
- タカヂアスターゼ
- プロザイム
【胃の薬】利胆成分
胆汁の分泌をうながして消化を助ける効果を、利胆作用と呼びます。
「胆」と「コール」のつく成分が、利胆成分です。
- 胆汁末(たんじゅうまつ)
- ユウタン
- 動物胆
- ウルソデオキシコール酸
- デヒドロコール酸
また、利胆成分は肝臓のはたらきを高める作用もあります。
注意点として、肝臓病の人は相談の必要があります。
第2章の消化器系で「胆嚢(たんのう)」が出てきますが、この利胆成分と合わせて覚えることができます。
- 胆嚢……肝臓でつくられた、胆汁を蓄える器官
- 利胆成分……肝臓のはたらきを高め、胆汁の分泌をうながす成分
共通点が多いので、合わせて覚えてしまいましょう。
【胃の薬】胃粘膜保護成分
胃粘膜保護成分は、胃の壁をおおっている胃粘膜にはたらく作用があります。
- 胃の表面をおおう、胃粘膜の分泌をうながす
- 胃粘膜をおおって、胃液による消化から保護する
- 荒れた胃粘膜の修復をうながす
胃粘膜保護成分は、かなり種類が多いです。
- アズレンスルホン酸
- アルジオキサ
- スクラルファート
- ゲファルナート
- ソファルコン
- テプレノン
- セトラキサート
- トロキシピド
- 銅クロロフィリン
- メチルメチオニンスルホニウムクロライド
- アカメガシワ(赤芽槲)
【注意点別】胃粘膜保護成分の語呂合わせ
胃粘膜保護成分の注意点は、かなりの確率で出題されています。
成分名と注意点を一緒に覚えられる語呂合わせがあるので、活用してみてください。
【あす、透析で腎臓病】
- アルジオキサ
- スクラルファート
- 透析を受けている人
- 腎臓病の診断を受けた人
【肝臓のソテー】
- ソファルコン
- テプレノン
- 肝臓病の診断を受けた人
【セトラ、ネキサム血栓】
「せとら、ねきさむけっせん」と読みます。
- セトラキサートが、トラネキサム酸に変化する
- 血栓を起こすため注意
【胃の薬】消泡成分
消化しているときに、発生した気泡の分離をうながすのが消泡成分です。
消化管内に発生したガスにより腹部膨満感の症状が出ることがあり、そのガスをおさえてくれます。
登録販売者試験で消泡成分は1種類のみです。
- ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)
ちなみに、ジメチルポリシロキサンは化学式名、ジメチコンは一般名です。
(病院から処方される薬の名前は「ジメチコン」)
市販薬だと、ガスピタンa に配合されています。
ガスピタンaは、お腹の張り・おならが気になる人向けの薬で、ヨーグルト味で服用しやすかったりします。
胃腸鎮痛鎮痙薬
胃のけいれんなど、胃腸の過剰な動きを抑えるはたらきがあるのが、胃腸鎮痛鎮痙薬です。
胃腸鎮痛鎮痙薬(いちょうちんつうちんけいやく)と読みます。
胃が痛い・治す = 胃腸の痛みを抑える = 胃腸鎮痛鎮痙薬
というイメージで、覚えておくのがおすすめ。
抗コリン成分は他の薬にも出てきますが、胃腸鎮痛鎮痙薬の抗コリン成分は、胃腸薬にだけ含まれます。
- ジサイクロミン
- オキシフェンサイクリミン
- メチルベナクチジウム
- メチルオクタトロピン
- ブチルスコポラミン
- チキジウム
- ロートエキス
胃腸鎮痛鎮痙薬の抗コリン成分について
抗コリンの基本的な副作用は、他の薬に含まれている副作用と変わりません。
- 眠気
- 眩しさ
- 口の渇き
- 便秘
- 排尿困難
胃腸鎮痛鎮痙薬は抗コリン成分のほかに、パパベリン塩酸塩・局所麻酔成分があります。
パパベリン塩酸塩
パパベリン塩酸塩は胃の痙攣をしずめる成分ですが、抗コリン成分ではありません。
消化管の平滑筋に、直接はたらいて作用します。
「パパベリン」と省略して覚えても大丈夫です。
抗コリン成分ではありませんが、副作用が似ています。
そのため眼圧上昇や、緑内障の人は注意が必要です。
パパベリン塩酸塩の覚え方
パパベリンは独立した成分なので、他の成分と作用が微妙にちがいます。
パパベリン専用の語呂合わせで、覚えられます。
パパの平滑筋は胃に強いけど、胃液はドバドバ出る。
たまに目が縮んで、緑になる。
- パパ……パパベリン
- 平滑筋……平滑筋に直接作用する
- 胃液ドバドバ……胃液分泌を抑えない
- 目が縮む……眼圧上昇
- 緑……緑内障
目が縮む → 目を潰すイメージ → 目にかかる圧力が上がる → 眼圧上昇につなげます。
「パパベリンは眼圧低下する」という問題は、×間違いです。
局所麻酔成分
消化管の粘膜や平滑筋への麻酔作用があるのが、局所麻酔成分です。
胃薬の局所麻酔成分は2種類あります。
- アミノ安息香酸エチル
- オキセサゼイン
たった2種類ですが、それぞれの成分に年齢制限や注意点があります。
詳しい解説は、下記のページをご覧ください。
胃腸鎮痛鎮痙薬の胃液分泌について
胃腸のけいれんや痛みをおさえてくれる胃腸鎮痛鎮痙薬。
実は、胃液の分泌をおさえる成分と、おさえない成分に分かれます。
- 胃液の分泌をおさえる
…オキセサゼイン・抗コリン成分 - 胃液の分泌をおさえない
…アミノ安息香酸エチル・パパベリン
胃液の分泌をおさえるか、おさえないかという内容が過去に試験で出題されています。
出題頻度は高くありませんが、余裕があれば覚えておきたいポイントです。
胃の薬のまとめ
胃の薬はたくさんの成分があり、苦手意識を持つ人も多くいたりします。
- 制酸成分…ミネラルを覚える
- 健胃成分…苦い味と良い香り
- 消化成分…〜〜アーゼ
- 利胆成分…利胆コール
- 胃粘膜保護…語呂合わせ
- 消泡成分…ジメチコン
- 胃痛抗コリン…語呂合わせ
ぶっちゃけ覚えることが多すぎるので、私は語呂合わせを使って覚えました。
時短勉強できたので、あなたに語呂合わせをおすすめします。
それぞれの役割、作用のちがいが理解できれば、合格後の現場でも役に立ちますよ。
あなたの勉強を、応援しています。
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