・殺虫剤の成分、種類が多すぎて覚えられない。
・可逆的と不可逆的のしくみが知りたい。
・そもそも、やる気が出ない。
そんな悩みを、解決します。
この記事を読むと、殺虫成分のそれぞれの違い、覚え方を学ぶことができます。
さらに、可逆的と不可逆的についての解説や、試験対策のゴロ合わせも紹介しています。
ぶっちゃけ、私は殺虫成分が苦手ジャンルでしたが、特徴をつかんで勉強することで覚えられるようになりました。
ぜひ、活用してみてください。
殺虫剤・忌避剤の成分
登録販売者試験に出てくる、殺虫系成分は3つです。
- 殺虫成分
- 殺虫補助成分
- 忌避成分
殺虫成分
殺虫成分は、主に衛生害虫の駆除を目的とする成分です。
衛生害虫とは、人体に保険衛生上の害を及ぼす昆虫のことです。
主にハエやダニ、ノミ、蚊など、病原菌や人の生活に支障をきたす昆虫を総称します。
いわゆる、あなたにとって不快をもたらす虫のことですね。
殺虫成分は、おおきく分けて6種類あります。
- 有機リン系
- ピレスロイド系
- カーバメイト系
- オキサジアゾール系
- 有機塩素系
- 昆虫成長阻害系
殺虫補助成分
殺虫補助成分は、殺虫作用は弱く、
殺虫補助成分の単体での効果については、ほとんどありません。
あくまで「補助」だからです。
殺虫補助成分は2種類出てきます。
- ピペニルブトキシド(PBO)
- チオシアノ酢酸イソボルニル(IBTA)
これらを殺虫成分とあわせて配合されることで、殺虫効果を高めます。
忌避成分
忌避成分(きひせいぶん)は、虫を寄り付かせないようにする効果があります。
殺虫成分とちがって虫を殺す作用ではありません。
そして、人体に(人の身体に向けて)使うことができます。
登録販売者試験では、1種類出てきます。
- ディート
有名な製品だと、サラテクトやスキンベープにディートが含まれています。
いずれも、6ヶ月未満の乳児に使用不可となっています。
殺虫成分で重要なポイント
殺虫剤・忌避剤の項目では、主に殺虫剤に含まれる殺虫成分がメインとなります。
そんな殺虫成分、重要なポイントが3つあります。
- 殺虫成分の作用を理解する
- 殺虫剤を効果的に発揮するための工夫を知っておく
- 可逆的と不可逆的のちがいを理解する
殺虫成分の作用を理解する
成分の種類が多い殺虫成分ですが、どう作用するかが問題に出てきます。
- アセチルコリン分解酵素と可逆的に結合……カーバメイト系、オキサジアゾール系
- アセチルコリン分解酵素と不可逆的に結合……有機リン系
- 神経伝達を阻害……ピレスロイド系、有機塩素系
- 昆虫の変態や脱皮阻害……昆虫成長阻害系
分解酵素との結合、神経伝達を阻害、昆虫の変態や脱皮を阻害、が殺虫成分の作用です。
どの成分がどの作用になるのか、というところを覚える必要があります。
殺虫剤を効果的に発揮するための工夫を知っておく
実際の殺虫剤では、殺虫成分を何種類も組み合わせて配合されています。
たとえば、カーバメイト系殺虫成分の1種類だけだとします。
すると、アセチルコリン分解酵素が可逆的に結合する昆虫には効果がありますが、それ以外の昆虫には効き目がありません。
そのため、神経伝達を阻害するピレスロイド系殺虫成分と合わせることで、
より多くの昆虫に作用するように製品がつくられています。
このような殺虫成分を複合している製品は、アースレッドプロαなどが該当します。
有効成分は、以下のとおりです。
- シフェノトリン(ピレスロイド系)
- メトキサジアゾン(オキサジアゾール系)
- プロポクスル(カーバメイト系)
このように、さまざまな殺虫成分を3種類配合することで、より効果的に害虫を駆除できます。
可逆的と不可逆的のちがいを理解する
アセチルコリンを分解する作用だと、可逆的か不可逆的かを問われることがあります。
この可逆的・不可逆的のちがいは、登録販売者試験において重要なポイントです。
どの成分がどちらにはたらくかが、問題で問われます。
丸暗記で内容を覚えてもいいのですが、
可逆的・不可逆的については、日常的な変化を使って覚えることができます。
可逆的と不可逆的の性質を理解できれば、殺虫成分の重要なポイントを1つおさえることができます。
可逆的について
- 可逆的……別の状態に変化しても、元の状態に戻ることができる
つまり、自由に状態変化するということです。
ここでは、水と氷をイメージしてください。
水は、冷凍庫に入れて温度を下げることで氷になり、常温なところに置くと、温度が上がって水に戻ります。
水から氷へ、氷から水へと、自由にカタチを変えることができますね。
この変化の性質を【可逆的】と説明することができます。
可逆的な殺虫成分は、カーバメイト系・オキサジアゾール系が該当します。
不可逆とは
- 不可逆……その状態に変化してしまったら、もう元の状態に戻らない
つまり一度変化したら、二度と元には戻らないということです。
不可逆的は、生卵からゆで卵になるイメージです。
ゆで卵になったら、何をしても生卵には戻ることができません。
これは卵のタンパク質が熱によって固まってしまうからです。
生卵がゆで卵に変化すると、ゆで卵が生卵に戻ることは二度とありません。
この、一生元に戻らない変化の性質を【不可逆的】と説明することができます。
不可逆的な殺虫成分は、有機リン系が該当します。
ここまでざっくりとした内容を見てきました。
いよいよ、メインの殺虫成分について解説していきますね。
有機リン系殺虫成分
有機リン系殺虫成分の種類・作用
有機リン系殺虫成分は、7種類あります。
- ジクロルボス
- ダイアノジン
- フェニトロチオン
- フェンチオン
- トリクロルホン
- クロルピリホスメチル
- プロペタンホス
害虫の体内にも人間と同じように、アセチルコリンという物質があります。
そして、アセチルコリンエステラーゼという、アセチルコリンを分解する酵素も存在します。
この分解酵素と有機リン系の殺虫成分が、不可逆的に結合することで酵素のはたらきを阻害するんですね。
そうなると害虫は中毒症を起こすためしんでしまう結果となります。
ゆで卵のように、二度と元に戻らない状態の結合をするので、そのまま滅することができるというわけです。
アセチルコリンエステラーゼについて
ちなみにアセチルコリンエステラーゼという名前には「アセチルコリンをエステル化する酵素」という意味があります。
- エステル化……分解するという意味
- エステラーゼ……語尾に〜〜アーゼ
消化成分のように、酵素の一種だということがわかります。
» 【胃薬の成分】登録販売者試験対策・解説まとめ(消化成分)
有機リン系殺虫成分の注意点
試験問題では、「有機リン系殺虫成分は可逆的である。」と問われることがあります。
もちろん、×間違いなので、引っかからないようにしてください。
また、注意事項に縮瞳(しゅくどう)と呼吸困難があげられます。
※ 縮瞳とは、瞳孔が縮むことです
この「縮瞳」というキーワード、
実は登録販売者試験の中でも、有機リン系殺虫成分しか出てこなかったりします。
縮瞳=有機リン系殺虫成分と覚えてしまいましょう。
有機リン系殺虫成分を使用した製品
有機リン系殺虫成分の製品では、ジクロルボスを主成分としたバポナ殺虫プレートがあります。
第一類医薬品なので、店頭になかなか置いてありませんが、Amazonや楽天などで買うことができます。
バポナ殺虫プレートは吊るしたり置けたりするタイプの殺虫剤で、蚊やハエ、ゴキブリなどが対象です。
一晩置いておくと、次の日には他の製品と比べ物にならないほど、プレートの周りにコバエが落ちています。(経験談)
カーバメイト系・オキサジアゾール系殺虫成分
カーバメイト系・オキサジアゾール系殺虫成分の種類・作用
カーバメイト系・オキサジアゾール系は、どちらも系統はちがいます。
しかし作用が同じなので、一緒にまとめられることが多いです。
- カーバメイト系……プロポスクル
- オキサジアゾール系……メトキサジアゾン
有機リン系と同じく、アセチルコリンを分解する酵素と結合して、はたらきを阻害することで殺虫作用があります。
カーバメイト系・オキサジアゾール系は、可逆的にはたらきます。
可逆的ということは、
不可逆的ではないため、有機リン系より毒性が低くなります。
つまり、カーバメイト系・オキサジアゾール系のほうが効果が弱いということですね。
ただ、多量に使用したり濃度が濃いと、呼吸困難が出ることがあります。
ピレスロイド系殺虫成分
ピレスロイド系殺虫成分の種類・作用
ピレスロイド系は3種類あります。
- ペルメトリン
- フェノトリン
- フタルスリン
(実際は他に種類がありますが、登録販売者試験ではこの3種類が出題されます)
ピレスロイド系は神経細胞に直接作用して、神経伝達を阻害することで殺虫効果があります。
除虫菊(ぼうちゅうきく)に含まれる殺虫成分がピレスロイドだったりします。
防虫菊とは、ピレスロイドを含む白い菊の花で、殺虫剤の原料になっています。
その除虫菊から開発され、家庭用殺虫剤として広く利用されています。
ピレスロイド系殺虫成分は、比較的すみやかに自然分解して残効性が低いという性質があります。
これは他の殺虫成分と比べて、使用後はすぐ分解されて、その場所に成分が残らないということです。
ちなみにピレスロイド系殺虫成分は、即効性があるので微量でも効果があります。
すぐ分解されて早く効くため、比較的安全な殺虫剤として活用されています。
ただ、大量にスプレーや煙を吸いすぎてしまうと危険です。
身体に異常があらわれたら、医療機関を受診する必要があります。
ピレスロイド系殺虫成分の製品
家庭用殺虫剤が多いピレスロイド系殺虫成分ですが、とても身近なものだと蚊取り線香です。
そもそも、除虫菊が原料となっているんですね。
害虫駆除スプレーで有名なアースジェットは、フェノトリンとフタルスリンの2種類が殺虫成分として配合されています。
どちらも防除用医薬部外品なので、登録販売者のいないホームセンターなどでも販売されています。
人の頭皮にいるシラミ駆除をするためのスミスリンというシャンプーがあります。
有効成分のフェノトリンはシラミの駆除として使用されていて、殺虫成分のなかで唯一、人体に直接使用できます。
スミスリンは第二類医薬品なので、ドラッグストアで販売されています。
有機塩素系殺虫成分
有機塩素系殺虫成分の種類・作用
登録販売者試験では、1種類のみ出題されます。
- オルトジクロロベンゼン
ピレスロイド系殺虫成分と同じく、
神経細胞に直接作用して、神経伝達を阻害することで殺虫効果があります。
有機塩素系殺虫成分の製品について
昔だと、有機塩素系殺虫成分の農薬がありました。
しかし大量にその農薬を使用した結果、人体に殺虫成分がどんどん蓄積されて母乳に移行するなどの被害が報告されたんですね。
そのため現在では、ウジ・ボウフラ駆除のみで使用されています。
例えば、バポナのうじ殺しアースなどがありますね。
ちなみに、ドラッグストアの防虫コーナーで異様な臭いを発している場合があります。
近づいてみると、このバポナのうじ駆除剤の臭いだったりします。
あなたがドラッグストアで働いているときに、納品された荷物から激臭を感じたら注意してください。
昆虫成長阻害成分
昆虫成長阻害成分の作用
昆虫成長阻害成分はその名のとおり、昆虫の変態や脱皮を阻害する成分です。
変態とは、生息する場所を変えるときに、姿や形を変える成長段階の変化のことです。
たとえば、カブトムシの幼虫は土の中にいますが、成長すると蛹(さなぎ)になり、脱皮して成虫になると木の幹に生息場所を変えます。
このような変化のことを専門用語で「変態」といいます。
昆虫成長阻害成分の種類
昆虫成長阻害成分は、それぞれ変態するとき、脱皮するときのどちらに作用するか、成分によって異なります。
- 変態の阻害……メトプレン、ピリプロキシフェン
- 脱皮の阻害……ジフルベンズロン
変態阻害成分は、幼虫→蛹になるのを防ぎます。
つまり、蛹にならない昆虫(不完全変態)の昆虫には効果がありません。
不完全変態は、いわゆる幼虫と成虫の姿が変わらないということです。
たとえばバッタやコオロギ、ダニやノミなどが該当します。
脱皮阻害成分は、幼虫が正常に脱皮するのを防ぎます。
蚊やハエなどの幼虫の成長を阻止することはできますが、成虫になってしまうと脱皮をしないので、効果がなくなります。
他の殺虫成分とは異なる作用で害虫駆除ができるため、
有機リン系やピレスロイド系の殺虫成分が効かない場合に、昆虫成長阻害成分は効果があります。
殺虫成分の語呂合わせ
登録販売者試験では殺虫成分が苦手という人も多いです。
そんなあなたに、語呂合わせで覚えるという方法もあります。
【不可逆トリック大事なフェチのプロ、リンちゃん】
【可逆のプロめ、リンより弱いのか…ゴホッ…】
「何これ、気になる」という方は、下記をどうぞ。
まとめ
- 殺虫成分、殺虫補助成分、忌避成分のちがい
- 殺虫成分の作用はコリン、神経、成長の3種類ある
- 可逆的は水、不可逆的は卵でイメージ
- 語呂合わせを使って覚えるのもアリ
成分の種類が多く、作用もそれぞれちがうので、試験でひっかけ問題が出てきたりします。
可逆的と不可逆的、作用のちがいといった、紛らわしい内容を過去問でしっかり対策しておきたいところです。
ドラッグストアでは、たくさんの殺虫剤・忌避剤が置いてあります。
それぞれの製品を見比べてみて、成分の違いを調べるのも1つの手です。
あなたの勉強のお手伝いになれば、幸いです。